投資哲学

マーケットニュートラル戦略を採用する理由

 私たちの採用する投資戦略は、日本株ロングショート戦略といわれるものです。株価の上昇が見込まれる銘柄を買い建て(ロングポシジョン)、株価の下落が見込まれる銘柄を売り建てる(ショートポジション)という両面を使い分けることで、相場動向に左右されず、安定した投資利益を狙う投資戦略です。

 株式ロングショート戦略は、株式運用のヘッジファンド戦略としてはもっとも一般的なものですが、世の中のロングショート戦略には大きな欠陥が存在しているように思えます。それは、ロング・ショートファンドと称してはいても、実際にはショートポシジョンの割合が少なく、ロングポシジョンに偏ってしまっているということです。私たちが独自に行った市場分析によると、日本株ロングショート戦略のヘッジファンドは、平均するとロング・ショートの比率が5対1程度に偏っている可能性があります。今後の相場付きを的確に予測できるのであれば、そのやり方でも良いのかもしれません。相場が上がるタイミングでは買いを増やして、相場が下がるタイミングでは売りを増やせば、大きな利益を上げることができます。しかし、現実は、「株は上がるもの」という固定観念が先立ってしまうため、相場上昇局面では高い利益を上げることができるものの、相場下落局面ではショートポジションが少ないためリスクヘッジにならず、損失を出してしまうことになります。相場下落局面を予測し、適切にショートポシジョンを増やすのは極めて難しいということを、私たちの市場分析の結果は物語っています。

 私たちは、「今後相場全体がどうなるかということは誰にも分からない」という前提のもと、ロングポシジョンとショートポシジョンを常に同じリスク量にあわせるという「マーケットニュートラル戦略」を採用しています。相場の上げ下げそのものに賭けるということは行いません。ボトムアップリサーチに基づく個別銘柄の強弱感のみに着目した投資を行います。

 ロングポジションに大きく偏っているロングショート戦略は、極端な言い方をすれば、シンプルな「ロングオンリー戦略」とさほどリスクもリターンも変わらないということになってしまいます。それは、投資家が本当にロングショート戦略に期待していることなのでしょうか? 私たちはそうは思いません。 相場環境が良いときは、環境の良さが、投資の本当のリスクを覆い隠してしまいます。 私たちは、相場が厳しいときこそ、その価値を発揮できる投資助言会社になりたいと考えています。相場環境に振り回されず、ストイックに、ボトムアップリサーチで得られた温度感を頼りに投資判断を行い続けること、これこそが私たちの存在価値であると考えます。